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キーワードでわかる臨床栄養

第9章静脈栄養法

9-4:消化器合併症[gastrointestinal complications]

消化器合併症[gastrointestinal complications]
 消化管に栄養剤を直接投与する経腸栄養に比較し静脈栄養による直接的な消化器合併症の頻度は比較的低い.末梢静脈栄養では経口摂取を行いながら施行する機会も多く,消化器合併症の頻度も低いが,TPNを施行する際に経口摂取を行わないため消化器関連合併症が発生すると考えられる.消化管を使用しないと①胃液の過剰分泌による胃炎,潰瘍形成,②消化管粘膜の萎縮とその結果起こるバクテリアルトランスロケーション(BT)(4-3:バクテリアルトランスロケーションの原因[bacterial translocation](https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch4-3/keyword10/)、10-2:バクテリアルトランスロケーション(BT)[bacterial translocation](https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch10-2/keyword1/)参照)などが起こる(参考文献9-4-8).
 胃液の過剰分泌による胃炎や潰瘍形成は胃液分泌を抑制するH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬の投与により改善する.
 消化管粘膜の萎縮は経口摂取や経腸栄養を行わない期間が長くなると起こるとされる.しかし通常は①重傷外傷,②多臓器不全,③重傷熱傷,④抗がん剤の投与や骨髄移植を受けたがん患者などといった病態に伴ってTPNを施行した場合に消化管内の細菌が血中に侵入する,いわゆるBTが起こるとされる.実験的には①出血性ショック,外傷,細菌毒素の投与などにより誘発される腸管透過性の亢進,②ステロイド投与,免疫抑制状態,グルタミン不足によるタンパク異化亢進,③腸管内容うっ滞による細菌の過剰増殖などによりBTが促進されると報告されている.したがってBTはこれらの重傷病態に伴って起こる病態であり致死率も高い.これらの病態改善や,少量の経腸栄養投与,グルタミン,プレバイオティクスシンバイオティクスの投与などが予防する方法として試みられているが栄養投与ルートを可能な限りTPNから経腸栄養に移行することがBT防止には最も有効である.
 長期にわたるTPNでは,①肝機能障害,②胆汁うっ滞や胆石の発生などもある(参考文献9-4-9).

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