第9章静脈栄養法
9-2:完全皮下埋め込み式カテーテル(CVポート)
■完全皮下埋め込み式カテーテル(CVポート)
一般に,CVポートと呼称されている(図2).カテーテルおよび,それに接続して輸液を投与するポートを皮下に埋め込み,使用する必要がある場合に,皮膚の上からポートのセプタム(シリコーン製膜)を穿刺して(Huber針を用いる,図3)投与する,というカテーテルである.使用しない期間には,体外露出部分がないので,入浴なども可能であり,患者のQOLの維持改善に有効であるとされている.22ゲージ針(Huber針に限る)の場合には,セプタムは2,000回の穿刺に耐えるとされている(図4).年単位での留置が必要な,在宅静脈栄養法(home parenteral nutrition:HPN)やがん化学療法施行症例に用いられている.抜去する場合には局所麻酔下に皮膚切開を行う必要があるため,長期留置症例に限るべきである.
筆者は,特に女性に対するCVポート留置に関し,より高いQOLをめざし,前胸部に留置することによる整容上の問題を考慮し,上腕に留置する方法を考案して実施している(図5).
図2●完全皮下埋め込み式カテーテル(CVポート)
血管内に挿入するカテーテルと,体外から針で穿刺して輸液を投与するポートからなる.輸液を投与しない期間には体外露出部分がないため,入浴なども可能であり,QOLを考えた場合に非常に有用なカテーテルである.しかし,抜去に際しては局所麻酔下に切開する必要があるため,長期留置症例に限るべきである.年余にわたって留置することが可能であるが,そのためには,特に投与する輸液ラインの無菌的管理に注意する必要があり,これが留置可能期間を決定する重要な因子である.
図3●CVポートに接続する針:Huber針
先端が特殊な構造になっている.ポートのセプタムのコアリングを少なくするためには,Huber針を用いる必要がある.通常の構造の針を用いると,いかに細い針を使用してもHuber針よりもコアリングが大きい.通常の針よりもずっと高価であるが,CVポートを長期間安全に留置して管理するためには,絶対にHuber針を使う必要がある.
図4●CVポートのセプタムの破損
セプタムは22ゲージの針で2,000回の穿刺に耐えるとされている.5年間使用したCVポートのセプタムを示す.中央部分は穴が開いた状態となっている.本症例は,患者自身が針を刺すという管理を行ってきた.セプタムの全体を満遍なく,均等に使ってはじめて2,000回の穿刺が可能ということである.自分で針を刺すと,痛くない部位を探して,そこに集中する傾向がある.そのために中央部分に穴が開いた状態となったものであろう.しかし,5年間使用できたということは,無菌的管理が徹底されていたことを示すものである.
図5●上腕ポート
女性の場合,前胸部にポートを留置することには抵抗がある場合もある.そこで,ポートを上腕外側に埋め込む「上腕ポート」を考案して実施している.本症例は皮下脂肪が豊富であるため,ポート留置による皮膚面の隆起はほとんど目立たない.