第8章経腸栄養法
8-4:半固形化栄養材
■半固形化栄養材
半固形(semi-solid)とは,液体と固体の両方の属性をもつ物質で,液体より固体に近い半流動体と定義され,粘性があり自由に変形することを特徴とする.チキソトロピー性とレオロジー性をもち,高粘度状態(ゲル)と低粘度状態(ゾル)に変化できる特性をもつものである.ネバネバやサラサラといった半固形の粘性は,流体の粘りの度合である粘度(viscosity)で表記される.半固形化に用いられる半固形化剤には,高分子多糖類としてゼラチン,ペクチン,グアーガム,寒天やデンプン,さらに卵黄,ヨーグルトなど実に多くある.各々の半固形化剤には物性上の長所短所があり,単独あるいはこれらの組み合わせにより適切に十分な粘度が得られるものを選択する必要がある.胃瘻から用いる半固形化栄養材の種類には,市販の半固形化栄養剤,液体栄養剤に半固形化剤を添加するもの,食事をミキサー化するミキサー食がある(表1).
(文献8-4-2より引用)
● ゲル化とゾル化について
ゲル:コロイド溶液が流動性を失った状態
ゾル:コロイド溶液が流動性を保った状態
チキソトロピー性:高粘度溶液(ゲル)に応力を加える(熱を加える,振動させるなど)と低粘度(ゾル)に変化し,放置すると再び高粘度化(ゲル化)する現象
レオロジー性:液体や半固形における粘度と粘性摩擦力(流動させたときに現れる抵抗力)の関係のことで,粘度が高くなると粘性摩擦力が大きくなる.
胃瘻からの半固形化栄養材注入では,粘度が高い栄養材ほど粘性摩擦力が大きいため(レオロジー性)胃内でのスベリが少なくなり生理的な消化管運動が得られる.消化管運動により,高粘度の栄養材は小腸では低粘度に変化し(チキソトロピー性)消化吸収される.