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キーワードでわかる臨床栄養

第4章栄養と免疫,および生体防御機構

4-1:抗体[antibody]

抗体[antibody]
 B細胞はクローンごとに固有の抗原受容体を保持しており,体内に抗原が侵入するとこの抗原受容体で特異的に抗原を認識する.このような抗原刺激によりB細胞の活性化・増殖が起こり,形質細胞に分化して抗原特異的な糖タンパクが分泌されたものが抗体である.
 抗体の基本構造は,2本の長いH(heavy)鎖と2本の短いL(light)鎖からなるY字型の構造である.そのなかで抗原の結合部位となるFabと,免疫細胞などと結合するFcに分けられる(図4).抗体の実体は免疫グロブリンという糖タンパク質であり,Fab部位のアミノ酸配列の違いによって5つのクラス(IgM,IgD,IgG,IgE,IgA)がある.各クラスの抗体は,体内の異なった部位で多様な機能を発揮している.一方でFc部位は免疫細胞に発現するFc受容体と結合する.Fc受容体には,IgGに対応するFcγRⅠ,FcγRⅡ,FcγRⅢが,またIgEに対応するFcεRⅠ,IgAに対応するFcαRⅠなどがある.抗体はこれらのFc受容体を介して先天性免疫細胞を活性化し,微生物の貪食や感染細胞の排除をもたらす.

図4●抗体の基本構造
2本の長いH(heavy)鎖と2本の短いL(light)鎖からなるY字型の構造をしている.
抗原の結合部位となるFab と,免疫細胞などと結合するFc に分けられる.


抗体の主な働き

a. 中和作用
 抗体のなかには,細菌,ウイルス,毒素に結合して感染力や毒性を失わせるものがある.中和作用を示す抗体は,組織の隅々まで浸透するIgGや粘膜表面に分泌されるIgAである.

b. オプソニン化
 IgGのように,細菌や異物の表面に結合して貪食細胞の貪食を促進する物質をオプソニンという.貪食細胞は,前述のIgGのFc部分に対する受容体(FcγR)によって細菌などの異物の表面に結合した抗体を認識することで,効率的に異物を貪食することが可能となる.貪食に抵抗をもつ細菌に対しても,オプソニン化を行うことにより貪食を可能とする.

c. 細胞傷害作用の増強
 FcγRを保持するマクロファージやNK細胞が標的細胞の表面に結合したIgGに付着し,標的細胞を傷害する反応を抗体依存性細胞傷害作用(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity:ADCC)とよぶ.

d. 補体の活性化
 IgMは特異的抗原と結合し補体の活性化に働く.

e. 脱顆粒作用
 マスト細胞,好塩基球,活性化好酸球はIgEに対する高親和性受容体(FcεRⅠ)を保持する.マスト細胞は結合組織や粘膜組織に存在し,好塩基球は血液中に存在して全身を循環している.マスト細胞や好塩基球は細胞内顆粒に炎症性メディエーター(ヒスタミン,トロンボキサン,ロイコトリエンなど)を蓄積しており,FcεRⅠに結合したIgEを介して抗原を認識すると,すみやかに顆粒内の炎症性メディエーターを放出する.その結果,局所で血流の増加や血管透過性の亢進,粘液の分泌促進,気道平滑筋の収縮などが起こる.この反応を脱顆粒とよび,これらの炎症性メディエーターは,寄生虫の排除を促進するとともに,アレルゲンに反応した即時型アレルギー発症にも関与する.

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