第4章栄養と免疫,および生体防御機構
4-1:抗体[antibody]
■抗体[antibody]
B細胞はクローンごとに固有の抗原受容体を保持しており,体内に抗原が侵入するとこの抗原受容体で特異的に抗原を認識する.このような抗原刺激によりB細胞の活性化・増殖が起こり,形質細胞に分化して抗原特異的な糖タンパクが分泌されたものが抗体である.
抗体の基本構造は,2本の長いH(heavy)鎖と2本の短いL(light)鎖からなるY字型の構造である.そのなかで抗原の結合部位となるFabと,免疫細胞などと結合するFcに分けられる(図4).抗体の実体は免疫グロブリンという糖タンパク質であり,Fab部位のアミノ酸配列の違いによって5つのクラス(IgM,IgD,IgG,IgE,IgA)がある.各クラスの抗体は,体内の異なった部位で多様な機能を発揮している.一方でFc部位は免疫細胞に発現するFc受容体と結合する.Fc受容体には,IgGに対応するFcγRⅠ,FcγRⅡ,FcγRⅢが,またIgEに対応するFcεRⅠ,IgAに対応するFcαRⅠなどがある.抗体はこれらのFc受容体を介して先天性免疫細胞を活性化し,微生物の貪食や感染細胞の排除をもたらす.
図4●抗体の基本構造
2本の長いH(heavy)鎖と2本の短いL(light)鎖からなるY字型の構造をしている.
抗原の結合部位となるFab と,免疫細胞などと結合するFc に分けられる.