第2章栄養素とその代謝
2-4:リポタンパク[lipoprotein]
■リポタンパク[lipoprotein]
血液中の脂質の輸送には,特別なしくみが用意されている.長鎖脂肪酸はアルブミンと結合して血液中を輸送される.中鎖および短鎖脂肪酸は親水性が高いため,血漿に溶解する.脂肪,リン脂質,コレステロールとそのエステル,脂溶性ビタミンは,水溶性のリポタンパク複合体として輸送される.
リポタンパクは,脂質とタンパク質の複合体の総称であり,血液中のリポタンパクは,水に不溶の脂質を運搬する役割をもつ(図4).比重の低い(脂肪の量が多い)ものから順に,カイロミクロン,VLDL(超低密度リポタンパク),IDL(中間密度リポタンパク),LDL(低密度リポタンパク)そしてHDL(高密度リポタンパク)がある(表2).いずれのリポタンパクも,その基本構造には共通点があり,外側に一層のリン脂質が,親水性基を外に向けて並び,内側には疎水性のトリグリセリドやコレステロールエステルが存在する.コレステロールはリン脂質の膜の間に存在する.また,リポタンパクのタンパク質部分はアポタンパクとよばれ,アポタンパクA(アポA),アポタンパクB(アポB),アポタンパクC(アポC),アポタンパクE(アポE)などがあり,それぞれが脂質の輸送にかかわる役目をもっている.
コレステロールは血漿中にはリポタンパク(HDL,LDL,VLDL)の形で含まれている.総コレステロールのうちHDLに含まれるコレステロールは,組織からコレステロールをとり出し肝臓に運ぶ(善玉コレステロールともいわれる).LDLやVLDL中のコレステロールは組織に運び入れられるので,悪玉コレステロールともいわれる.
図4●リポタンパクによる脂質の輸送
A,B,C,EはそれぞれアポA,アポB,アポC,アポEを示す.CM:カイロミクロン
(文献2-4-3より引用)