第2章栄養素とその代謝
2-2:糖新生系[gluconeogenesis]
■糖新生系[gluconeogenesis]
血糖値の低下は,脳細胞に重大な影響を及ぼす.脳には血液脳関門が存在するため,脂肪酸は通過できずエネルギー源として利用できない.そこでグルコースが貴重なエネルギー源となる.
肝臓に貯蔵されているグリコーゲンは,食事によって十分な糖質を供給できない状況下では,半日~1日程度で枯渇するため,グルコースを供給する糖質以外の物質をグルコースに変換する糖新生系が必要となる(図4).
糖新生に利用される主な材料は,筋肉タンパク質の分解によって供給されるアミノ酸(糖原性アミノ酸),脂肪細胞の中性脂肪(トリグリセリド)の分解で生じるグリセロール,および嫌気的解糖によって生じる乳酸である.
糖新生は,血糖維持のために酵素活性による短期的,およびホルモンによる長期的な調節を受けているが,長期的な制御の方が重要である.長期的な制御は,グルココルチコイド,グルカゴン,アドレナリンによって活性化され,インスリンにより抑制される.糖尿病になるとインスリンによる糖新生の抑制が行われにくくなり,高血糖にもかかわらずグルコースを放出し続け,結果として糖尿病を悪化させてしまう.インスリン感受性の改善やインスリンの補充を行うことは,グルコース産生を抑えるうえで必要である.
図4●糖新生の反応
→:グルコース-アラニン回路 :コリ回路
ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ
(文献2-2-2より引用)