第2章栄養素とその代謝
2-2:電子伝達系[electron transport chain]
■電子伝達系[electron transport chain]
電子伝達系では,酸化的リン酸化によるATPの合成が行われる.酸化的リン酸化とは,栄養素の酸化によって得た水素(クエン酸回路で生成したNADH+H+とFADH2の水素)を利用して行う化学反応であり,ミトコンドリアの電子伝達系と共役して行われる(図3).水素イオン(H+)は電子伝達系を介してミトコンドリア膜間腔に運ばれ,その結果,水素イオン濃度が上昇することから濃度勾配が形成される.
ATP合成酵素は,ミトコンドリア内膜に存在しており,ミトコンドリアマトリックスに流れ込もうとする水素イオンの経路となって,分子の一部を回転させ,そのエネルギーでADPと無機リン酸(Pi)からATPを合成する.一方,水素イオンは最終的に酸素(O2)と結合して代謝水が生成する.以上の酸化的リン酸化の過程で,NADH+H+からは3分子のATP,FADH2からは2分子のATPが生成する.
図3●電子伝達系