第2章栄養素とその代謝
2-1:管腔内消化と膜消化[intraluminal digestion and membrane digestion]
■管腔内消化と膜消化[intraluminal digestion and membrane digestion]
管腔内消化とは,口腔からはじまる消化管内で分泌される種々の消化酵素によって食物が小分子化される過程をいう(図1).
口腔では,摂取された食物が細かくかみ砕かれ(咀嚼),唾液とよく混合され,適当な大きさの食塊となり,食道へ送られる.なお,唾液にはα-アミラーゼが含まれ,糖質の高分子体であるデンプンの消化を行う.
胃では蠕動運動により,食塊と胃液がよく混合され,半流動状となって十二指腸に輸送される.胃液中には消化酵素のペプシンが含まれており,タンパク質の化学的消化が行われる.
十二指腸には,胆汁および膵液が分泌される.胆汁は,食物中に含まれる脂質の消化・吸収を助ける(乳化)役割をもつ.
膵液には各種消化酵素が含まれている.トリプシン,キモトリプシン,エラスターゼおよびカルボキシペプチダーゼはタンパク質の消化を行う.α-アミラーゼはデンプンの消化を行い,リパーゼは脂質の消化を行う.
消化と吸収の区別は,一般にははっきりつけにくい.消化の最終段階と吸収の最初の段階は,小腸粘膜の微絨毛において同時に行われている.これを膜消化という.
アミノ酸が2~3個結合しているオリゴペプチドは,小腸粘膜の上皮細胞膜に存在する酵素(ジペプチダーゼ,アミノペプチダーゼ)によって,アミノ酸に消化と同時に吸収される.また糖質のうち二糖類を分解する二糖類分解酵素であるマルターゼ,スクラーゼ,ラクターゼが存在する.
図1●消化過程と消化酵素