第11章高齢者の栄養管理
11-3:ADの食の課題[challenges in eating behavior in AD]
■ADの食の課題[challenges in eating behavior in AD]
表1にはFAST(functional assessment staging)による重症度評価と重症度別の口腔のセルフケアおよび摂食嚥下機能と口腔管理の要点を示す.食事動作は習慣的動作であるため軽度ADでは大きな課題はない.中等度ADでは認知機能低下により時間経過や食事環境,提供された食物などを把握し適切に注意を向けることが障害される.例えば食事を目の前にしても摂食行動を開始できず混乱して別の行動を起こす,または行動を起こすことができない摂食開始困難,また食具使用困難,食事の中断などが起こる(参考文献11-3-5).摂食行動が障害されていても咀嚼や嚥下機能の低下が軽度であれば誤嚥リスクは少ないが,しだいに咀嚼の協調運動が障害され,リズミカルで複雑な咀嚼の動きが失われる.さらに進行すると口腔内での移送が困難になり,溜め込み,吐き出しなどの症状が起こる.最重度に至ると嚥下反射の惹起や喉頭挙上が障害され,咽頭期嚥下障害となり誤嚥が起こりやすく,結果として体重減少,免疫力低下が起こる.重度ADにおいては全身衰弱と機能障害だけでなく,生体恒常性の破綻と基本的生体機能の障害が起こっており,たとえ経管栄養で栄養が補給されていたとしても十分な吸収が困難であるとの報告がされている(参考文献11-3-6).
(文献11-3-9,11-3-10,11-3-11をもとに引用)