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キーワードでわかる臨床栄養

第11章高齢者の栄養管理

11-1:在宅での栄養管理

在宅での栄養管理
 人間はいつの時代においても,健康で,普通に生活ができることを願っている.しかし,高齢により心身の能力が低下,喪失し,さらに慢性疾患を多数抱えることで,自立した生活を送ることが困難になり,医療機関や高齢者施設で日々を送ることになる人々も少なくない.高齢になっても幸福感を感じながら健康寿命を維持するには,可能な限り住み慣れた自宅での生活を営むことが求められ,そのためには在宅での栄養管理が必要になる.しかし,在宅での栄養管理は,病院や高齢者施設と異なり厳密な栄養管理を行うことは難しい.
  そこで第一に必要なことは,対象者や家族,あるいは同居人,さらに家庭をとりまく地域の人々との人間関係や地域の特徴,コンビニやスーパーマーケット,食品店,レストランや食堂など,在宅栄養管理を支えてくれる環境状況の把握が必要になる.第二が対象者や家族の栄養管理に関する知識や技術,地域の支援体制の調査である.これらを把握して,実際の食事や経腸・静脈栄養の実施方法など,対象者のアセスメント結果に基づいてケア計画を組み立てる.第三に,高齢者においては,性,年齢,さらに健康状態や疾病状態が同一だとしても,画一化された食事法や食事療法は存在しないと考えるべきである.個々の対象者がもつ疾病の程度,多様性,健康障害リスク,さらに生活習慣,薬物などを考慮した,個別化された総合的な栄養管理の方法を,医師,管理栄養士,看護師,薬剤師,保健師,理学療法士,作業療法士などが連携して作成・実施していくことが必要になる.この場合,それぞれの専門職が専門性を尊重しながら経腸・静脈栄養剤の種類や実施方法,さらに特別用途食品・介護食品の活用,日常の食材の選択・献立・調理,摂食や投与の方法,食品衛生や食環境整備,家族や地域の役割を決めて,チーム全体で安全で適正な栄養管理を行う必要がある.病院や高齢者の施設と違い,計画通りに実施されないことも少なくないので,対象者と専門職が何度も議論を重ねて,1つずつ解決していくことが必要になる.

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