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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-7:高齢者糖尿病[older adults with diabetes]

高齢者糖尿病[older adults with diabetes]
 本邦では65歳以上の5人に1人が糖尿病と推定されている.2017年6月に高齢者糖尿病の診療向上のために日本糖尿病学会と日本老年医学会の共同編集により「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」が刊行された.高齢者糖尿病は認知機能や身体機能の障害が起こりやすく,その評価を含む高齢者総合機能評価の実施は重要である.高齢者糖尿病血糖コントロール目標(HbA1c値)は認知機能,日常生活動作(ADL),併発疾患,重症低血糖のリスクなどに基づき設定する(表3).
表3

(文献10-7-8より引用)

 食事療法では,過栄養のみならず低栄養やサルコペニアにも配慮し,タンパク質やビタミンなどの摂取量にも留意する.運動療法は,有酸素運動に加えて,レジスタンストレーニングやバランストレーニングの併用が望まれる.
薬物療法では,低血糖や他の有害事象を防ぐために個々の心身機能や病態に十分配慮するとともに,アドヒアランス低下やポリファーマシーにも注意する(参考文献10-7-8).また高齢者糖尿病では,インスリン分泌の低下や遅延(参考文献10-7-9),内臓脂肪蓄積や筋肉量減少に伴うインスリン抵抗性の増大,身体活動量の低下などにより食後高血糖やシックデイ時の高浸透圧性高血糖をきたしやすい.下痢・嘔吐などの消化器症状や感染症などで発熱や炎症を認める場合,あるいは強制栄養施行時は注意を要する.また,グルカゴン分泌も低下し低血糖を起こしやすいが,加齢のため典型的な発汗・動悸などの自律神経症状が出にくく,めまい,ろれつ不良などの非典型的な症状や認知機能や意欲の低下,せん妄などの精神症状,神経症状を呈する場合もあるので,対処法の指導が肝要である.

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