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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-3:open abdominal management(OAM)

■open abdominal management(OAM)
 多発外傷を救命できる施設では,damage control strategyに基づき,初療室では救命に必要な処置・手術のみ行って早く集中治療室にドック入りし,集中治療室で外傷死の三徴とよばれる低体温,凝固障害,代謝性アシドーシスの是正を優先とした全身管理を行い,全身状態安定後に根治的治療を行っていく(参考文献10-3-1).腹部の重症外傷が救えるようになってきた背景には,damage control surgeryや血管内治療 (IVR:interventional radiology)の普及と,以前行われていた大量輸液による希釈性凝固障害や腹部コンパートメント症候群の減少がある.腹部コンパートメント症候群は,出血や腸管浮腫によって腹腔内圧が上昇することにより,腸管を含む臓器灌流障害から多臓器不全をきたす病態である.このような症例では,一時的閉腹(ガーゼやデバイスを用いて腹壁を覆う)を行い,出血,腹腔内汚染,腹腔内圧がコントロールされて閉腹できるまでOAMが必要になる(図3).
図3
図3●open abdominal management
・腹部コンパートメント症候群に対してABTHERA™治療システム(ケーシーアイ株式会社)を用いたopen abdominal management.
・腹腔内圧が上昇しているため腹壁を開放,腹壁と臓器を隔てつつ,不足分の腹壁はスポンジで代用し,陰圧によって腹水の吸引と創縁を寄せる役割を果たす.

OAMでは,腸管損傷が否定できる,もしくは人工肛門造設などで経腸栄養を開始できるようになった時点で,経腸栄養を少量ずつ開始することにより早期創閉鎖や腸管浮腫軽減,瘻孔・感染など合併症減少の効果が期待できる.腹腔内から出血・腹水・浸出液が多いと窒素出納は著しく負に傾くため,タンパク質を中心とした静脈栄養も考慮する.

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