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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-16:がん患者の代謝[metabolic status of cancer patients]

がん患者の代謝[metabolic status of cancer patients]
 前述した炎症性サイトカインおよびPIFLPMにより栄養代謝が大きく影響を受ける.

① 糖代謝
 腫瘍細胞はグルコースを消費するため,グルコース回転亢進,コリ回路活性亢進(嫌気代謝),および肝糖新生増加が認められる.インスリン抵抗性の増加の結果,耐糖能異常を生じる(参考文献10-16-21).

② タンパク代謝
 人体のタンパク質の約50%が筋肉で占められている.悪液質患者では,内臓タンパクは保たれ,肝臓は腫大する一方で,筋肉は進行性に減少する.原因としては,炎症性サイトカインの上昇,PIFの作用などによる,タンパク異化の亢進,同化の抑制が考えられる.
LBM減少の経路として①ライソゾーム経路,②カルシウム調節性カルパイン経路,③ATPユビキチン依存性タンパク分解,の3つの経路が考えられている.このうちで特にユビキチン依存性タンパク分解ががん悪液質患者におけるタンパク分解で最も重要な役割を果たすと考えられている(参考文献10-16-20).
全身的には,タンパク回転の亢進,acute reactive protein(急性相タンパク)の合成促進も認められる.

③ 脂質代謝
 脂肪の著明な減少も悪液質に特徴的である.これは脂肪合成の抑制よりも,むしろ脂肪分解が亢進することが原因と考えられている.TNF-αおよびLPMの分泌の関与が考えられている.脂肪組織および肝リポプロテインリパーゼ活性の抑制,脂肪酸合成酵素活性の抑制,遊離脂肪酸の減少,脂質異常症などを認める(参考文献10-16-20).

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