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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-13:炎症時の血清アルブミン,トランスサイレチン[serum albumin, serum transthyretin]

■炎症時の血清アルブミン,トランスサイレチン[serum albumin, serum transthyretin]
 腸炎が持続したり肺炎を合併したりして炎症が続いていると,肝臓でのアルブミンやトランスサイレチン(プレアルブミン)の合成が抑制され,急性相タンパク(CRP)の合成に傾く.血清アルブミン値が低下すると血管内の膠質浸透圧が低下するので浮腫が出現する.血清アルブミン値が2.5 g/dL以下の高度低下がみられた場合は,胸水や腹水貯留による呼吸困難が出現することがあるので,アルブミン製剤の静注を考慮する.
 血清アルブミンは肝臓で合成されるタンパク質で,分子量66,000,血中での半減期は約15日である.炎症性腸疾患症例では,タンパク質の摂取量が減少するために肝臓での合成が低下して,低アルブミン血症に至る.ネフローゼ症候群を合併していると,アルブミンが尿中に漏出する.甲状腺機能亢進があっても低アルブミン血症が起こる.クローン病ではタンパク漏出性胃腸症の病態を合併していることがあるので,低アルブミン血症をきたしやすい.輸液により血液の希釈が起こり,アルブミン濃度は低下する.急激な血清アルブミン値の上昇は脱水症で起こる.経時的に血清アルブミン値の変動をみる場合は,早朝空腹時に採血する.半減期が比較的長いので,栄養摂取がすすんでも血清アルブミン値はすぐには上昇しない.短期的な栄養管理状態を評価する場合には,ラピッドターンオーバープロテイン(rapid turnover protein:RTP)を指標に用いるべきである.RTPとしては半減期約2 日のトランスサイレチン(プレアルブミン)を用いる.血中濃度が21 mg/dL 以下に低下している場合には栄養療法を考慮する.炎症性疾患では血清トランスサイレチン値が低下しやすい.

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