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キーワードでわかる臨床栄養

第10章各疾患の栄養管理

10-3:強化インスリン療法[intensive insulin therapy(IIT)]

強化インスリン療法[intensive insulin therapy(IIT)]
 重症患者では,内分泌・代謝系の亢進,カテコラミンやステロイドの使用により,インスリン抵抗性が増大し高血糖となることで,感染防御能の低下や創傷治癒遅延につながることが指摘されてきた.2001年に発表されたLeuven I trialでは,血糖を80~110 mg/dLに厳格に低く管理した強化インスリン療法(IIT)群の方が180~200 mg/dLに管理した群よりもICU内死亡率が低かったと報告された.しかしその後,2009年に報告されたNICE-SUGAR trialを中心とした複数の無作為化比較試験において,IITによってむしろ低血糖の頻度が増え,死亡率を増加させることが示された(参考文献10-3-5).厳格な血糖コントロールは,低血糖やそれに伴う循環動態への影響が考えられており,機序としてQT延長,カテコラミン過剰分泌による血流変化,血管内皮の機能異常,炎症・血栓傾向の誘導が指摘されている.重症患者の栄養療法ガイドラインや敗血症診療ガイドラインでは,144~180 mg/dLを目標とした血糖管理が推奨されている.
 近年は,低血糖を避けるだけでなく,酸化ストレスの原因となりうる急激な血糖変動を避けることも重要視されるようになってきており,glycemic variability(GV:血糖の日内変動)を抑えたり,time in range(TIR:目標血糖値範囲内に該当していた時間)を延ばすことが重症患者の生存率に寄与することが示されている(参考文献10-3-6).その方法として,低糖質経腸栄養剤の使用,continuous glucose monitoring(CGM),人工膵臓などのclosed loop systemが有用とされている.

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