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第1章:栄養不良とその結果

1-2:栄養不良とその結果

 栄養不良は食事摂取不足やストレスなどの代謝変化により起こり、体組成や機能異常を来し、究極には死に結びつくことがある。栄養不良の患者は合併症が多く、入院期間が長くなり、医療費の増大につながるため、その認識と対応は重要である。
1)栄養不良患者の診断
 栄養不良患者は詳しく調べればかなり多いが見過ごされやすい。その判定は栄養アセスメントにより行われるが、1-1:栄養不良の定義に詳しく述べられている。
 臨床的にみられる栄養不良患者は、食事摂取が不十分で起こるタンパク・エネルギー不足のmarasmusタイプのものが多い。タンパクとエネルギーが不足するためprotein energy malnutrition(PEM)で、以前はprotein calorie malnutrition(PCM)と呼ばれていた。原因は食思不振、上部消化管狭窄などによる食事摂取の不足や消化・吸収障害、ストレスなど多くの因子がかかわっている。著しい体重減少は見た目に気がつくが、厳密な栄養低下は認識されにくい。栄養不良の診断は栄養アセスメンと呼ばれ多くの方法があるが、スクリーニングとしては最近の体重減少と食事摂取量の調査を入院時に行い、アルブミン値やコリンエステラーゼなど生化学検査を参考にする。栄養低下のリスクのある場合は1-6:栄養アセスメントに述べられている詳しい栄養アセスメントを行う。 TPNの開発によって栄養の重要性が認識され、栄養評価が行われ始めた1980年代に病院におけるいろいろな疾患、年齢層での栄養不良患者の頻度が調査された。対象患者の種類や栄養評価の方法が異なるのでばらつきはあるが栄養不良患者の頻度は20〜50%とかなり多いことが示された。さらに入院時に栄養不良と認められた患者は手術のリスクが高く、栄養サポートを受けない場合はさらに悪化することが認められた。
3)栄養不良の原因
 食物摂取が不十分なために起こる飢餓状態が主な原因で、消化・吸収障害やストレスによる代謝異常が加わると悪化する。食事摂取の低下は食思不振、咀嚼不能や上部消化管狭窄、嚥下障害などが主な原因であるが悪性腫瘍など疾患そのものによることもある。
4)栄養不良の臨床的影響
 栄養不良は病気に悪影響を及ぼし、死を早める危険がある。栄養低下患者は無気力となり治療への積極的な取り組みが失われる。体重減少が起こり、筋肉の消耗により、術後の早期離床遅延、呼吸器系合併症などを来しやすい。
 したがって栄養不良は病気の回復に悪影響を与え、手術の術後合併症の発生率が高くなり、著しい場合は死亡率も高くなる(栄養不良と合併症・死亡率)。合併症が多くなれば、当然入院期間は延長し(栄養不良と在院日数)、治療費は高くなる(栄養不良と医療費)。
 栄養不良に伴う治療成績の低下や経済的負担は適切な栄養管理によって防止することは可能である。栄養状態の系統的なアセスメントを行い、栄養不良患者を把握し、栄養治療を行うことにより治療成績を高め、経済効果が期待できる。

図I 栄養不良の原因とその結果

図1
【執筆】曽田益弘氏
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